日本が世界の主導権を握ることができる分野

シェアリングエコノミーへのブロックチェーン導入をチャンスと見る国もあります。インターネットでキープレーヤーになれなかった国も、ブロックチェーンなら勝機があるのです。

「ブロックチェーンは仕切る人がいない民主的な仕組みなのに、キープレーヤーを目指すのは矛盾だ」と考える人がいるかもしれません。たしかに資産を管理する第一層(図参照)は誰も支配することはできません。しかし、シェアリングエコノミーを動かす第二層は、その仕組みをもっとも上手につくってユーザーを獲得した企業がプラットフォーマーになっていくでしょう。幸い、日本には第一層と第二層をつなぐ技術を持つ世界的なエンジニアが何人もいます。その点でアドバンテージは大きい。

第二層を日本の企業が握れば、シェアリングエコノミーを取り巻く法制度には日本法の価値観が反映され、国際的な影響力を持つようになります。いま世界的なインターネット企業を相手に訴訟したければ、カリフォルニア州の裁判所で争うしかないのと同じです。

ただ、日本は米国や中国に比べて予算が割り当てられていません。しかも日本国内は「既存企業が主体となるDLTは信用できるが、ブロックチェーンは信用できない」という論調で、逆風が吹いています。

国を挙げて世界のプラットフォームを握ることができる分野だという認識を持ち、積極的に行動することが求められると思います。

岡田仁志
国立情報学研究所 准教授
1965年、大阪府生まれ。東京大学法学部卒業。大阪大学大学院博士前期課程修了。博士(国際公共政策)。2007年より現職。著書に『決定版 ビットコイン&ブロックチェーン』(東洋経済新報社)、『電子マネーがわかる』(日本経済新聞出版)など。